Your PrincessⅡ
 蘭と一緒に暮らすようになって数か月。
 一人が好きなくせに、蘭は夕食と朝食はクリスたちと一緒に食べていた。
 アズマがこっそりと「皆で食べるのが好きなんですよ」と教えてくれた。
 とはいえ、蘭は上から目線で物事をガンガン言ってくるので。
 サクラはイライラが募っていたのだと思う。

 キッカケは何だったのかはわからないが、
 サクラが「ぎゃー」といきなり悲鳴をあげた。
 2階にいたクリスが慌てて下に降りると、サクラと蘭が言い争っている。
「私だって、好きでこんな身体になったわけじゃない」
「俺は別に文句を言っているわけじゃない」
「じゃあ、何でそうやって汚いものを見る目でいっつも接するわけ? 気持ち悪いって思ってるんでしょ」
「俺がいつ、おまえのこと汚い者だって言った?」
「あんたのその目つきが嫌い!」
「じゃあ、おまえの中途半端な女心が嫌いだ!」
 お互いの言っていることは無茶苦茶だった。
 かっとなったサクラは、グーで蘭の顔面をパンチをした。
 てっきり、クリスはよけるのだと思っていたが。
 蘭は、思いっきりサクラの拳を顔面に受けている。

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 と蘭は立ち上がった。
 蘭の悲鳴を聞いたアズマが慌てて駆け付ける。
「おまえ、今、俺に触ったな?」
 みるみる青ざめていく蘭であったが、「あれ?」と言って自分の両手を見た。
「何でだ?」
「まあまあ、二人とも落ち着いて」
 そう言って二人の中を取り持とうと、クリスが近寄る。
 その際、クリスの肩が蘭に微かに触れた。
「ほんと、ふざけんなクリス!!!」
 蘭は絶叫する。
 一部始終を見ていたであろう渚が、
「蘭、いい加減にしろよ」
 と大声を出した。
 いつもニコニコ笑っている渚が急に大声をあげたので、蘭はビックリしていた。
 だが、すぐに青ざめて口元を抑えて、二階へと上がって行った。

 一気に静まり返るダイニングルーム。
「どうして、蘭はクリスにだけ冷たいんだよ」
 と渚が涙目で言った。
 じっと黙っていたアズマが皆の前に立って言った。

「申し訳ありません。皆さま」

「アズマさんが謝ることじゃないわよ。あのお坊ちゃんが悪いんだから」
「そうだよ。今のは絶対に蘭が悪いんだから」
 身体を90度近く折り曲げて謝るアズマは頭を上げなかった。
「違うんです」
「違うって?」
「皆さまには、ずっと隠していたことがあるんです」
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