Your PrincessⅡ
 街は、人が多く活気に満ち溢れている。
 クリスさんに「ちょっとだけ待っていてもらえる?」と言われ、車を降りた。
 クリスさんがイライラしているのを初めて見た。
 車が去っていくのを見送って。
 目の前にある街並を眺めた。
 ほとんどが飲食店だった。
 夜だというのにこんなに人が出歩いていることに驚く。
 人生でこんなに活気あふれる街を見たのは初めてかもしれない。
 人々の通行の邪魔にならないように、端っこに立った。
 ふぅ…とため息が出てしまう。
 自分は運転していたわけじゃないのに、ずっと車に乗っていると疲れてしまう。
 運転しているクリスさんは、もっと疲れているんだろうなあと思った。

 ぼんやりとしていると「カレンちゃん」と呼ばれて、振り返る。
 頭に布をぐるぐると巻き付けたクリスさんが立っていた。
「今日は一泊して、朝イチで出発しよう」
 自然と手を握られて、ずんずんとクリスさんは足を速めた。
 いきなり、手を握られて心の中でキャーと叫ぶ。

 クリスさんが連れてきたのは、
 古びたホテルだった。
「いきなりだから、一室しか空いてなくて…同室でごめん」
「えっ」
 部屋はツインルームで。
 ベッドが2つ置いてあるだけのシンプルな部屋だった。
「食べ物買ってくるから、ゆっくりしてていいから」
 早口でクリスさんが言うと、すぐに部屋から出て行ってしまう。
(気まずい…)
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