Your PrincessⅡ
 ホテルには、シャワーがなかった。
 クリスさんが買ってきてくれたパンを食べ終えると。
 すぐにクリスさんはベッドに横になった。
 どうしていいのかわからずに、クリスさんを眺める。

「ごめん、俺。女の姿見られるの、あんまり好きじゃないんだ」

 思わず、「ごめんなさい」と口から謝罪の言葉が零れ出る。
「昔さ、カレンちゃんにサクラは心が弱いって言ったことあったよね」
「……」
 急にサクラという言葉が出てきて。
 懐かしいと同時に。
 彼女は大丈夫なのだろうかと心配になる。
「偉そうなこと言うけど。俺も同じなんだろうね」
 背中を向けたまま、クリスさんが言う。
 後ろ姿は、あまりにも寂しそうだ。

「おやすみなさい」
 これ以上、話しているのが辛くなってくるので。
 ベッドに横になる。
 毛布をかぶる。

 外のガヤガヤとした騒音が、はっきりと部屋の中にまで入ってくる。
 それでも、疲れているのか瞼が重い。

「カレンちゃん、蘭と結婚してくれてありがとう」

 突然、クリスさんが変なことを言うので。
「えっ」と声を出してクリスさんを見た。
 クリスさんからは、すーすーという寝息が聞こえる。
 一体、どういう意味なのかはわからないけど。
 とりあえず、今は寝ようと思った。
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