Your PrincessⅡ
「ある程度、回復したらここから出て行けよ」
 心配しながらも、任務を遂行せねばとマリアは突っ張る。
「……」
 一言も発しないサクラに、マリアはイラッとする。
 一体、サクラが何を考えているのかさっぱりわからない。
 虚ろな目は、死んだ魚と同じように濁った眼をしている。
「アハハハハ。じゃあねー」
 と言って、ジョイは出ていく。
 マリアはサクラを睨みつけた後、小屋から離れた。

「女心は難しいねえ。マリアちゃん」
「…俺、酷いこと言っちまったかなあ」
 サクラから離れて落ち込むマリアに、ジョイは笑い飛ばした。
「あの子、同年代の男が怖いんじゃねえの? まあ、マリアちゃんは女の子だから心配ないよ」
「…あのなあ、ジョイ」
 何度説明すればわかるのだろう?
 よく女に間違われるが自分はれっきとした男だ。

 モヤモヤと落ち込むマリアをよそに。
 サクラは今までの人生を考えるようになった。
 生まれてからの日々、家族との確執。
 クリスとの出会い、楽しかった日々。
 苦痛でしかなかった騎士団学校での生活。
 同級生からの暴行。

 自分はいつだって一人だ。
 いつも、一人だった。
 考える日々は続いた。
 自分は何も悪いことをしていないのに。
 どうして神様は天罰を与えるのだろうか。
 自分は何をやりたいのだろうか。
 未来が見えない。
 叫ぶ、泣く。
 嫌だ嫌だと、走り周り。
 疲れては立ち止まる。

 喉が渇く。
 お腹がすいてしまう。
 …決して、死にたいとは思わない。
 誰かに助けてもらいたかっただけだ。
 この地獄の日々を。
 誰かが助けにきてくれる。
 そう信じていただけだ。

 悲しいのに、お腹はすくし。
 泣いても、どうにもならない。
 誰か、助けに来いよ。
 誰に助けに来てもらいたいの?

 自問自答。
 お腹がすいた。
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