Your PrincessⅡ
20.ある家族の秘密
 ローズと蘭の父親が王位を継いだのは、60歳近くになってからだ。
 父親は、ソテツという呼び名だった。
 ソテツは、当初、王位を継ぐ予定ではなかった。
 末っ子だったので、兄が国王を継承し、
 兄の息子が次期国王だったからだ。
 その兄と甥の2人が戦争で命を落とした。
 その為に、年を取ってから王位を継承したのである。

 ソテツは独身であった。
 国王になる者は代々、他国から嫁をもらうという風習があった為、
 ソテツは、隣国から花嫁を迎え入れた。
 花嫁はまだ16歳。
 祖父と孫娘くらいの年の差であった。

 ソテツは、16歳の妻を愛することが出来なかった。
 我儘で会話が噛み合わない彼女と一緒にいるのは苦痛だった。
 だが、妻の方はこの国の妃として、しっかりと務めを果たそうとしていた。
 国王への愛はなかった。
 自分は、ここで妃として立派に生きていければいいと考えていたからだ。

 幼い妃は、嫁いでから王族を一人ずつ殺害していった。
 当初は、不慮の事故・病気で片付けられていたが、
 ソテツはすぐに、妃の仕業だということに気づいた。
 もしかすると、妃は自分を殺してこの城を、この国を乗っ取るのだろうか。
 ぞっとするような考えが頭に浮かんでは消えた。

 一年後、妃は男の子を生んだ。
 妃そっくりの男の子だった。
 ぎょろっとした青い目を見て、ソテツは自分にちっとも似ていないなと感じた。

 子供の呼び名は、ローズと名付けられた。
 ローズは、生まれつき身体が弱く何度も死にかけた。
 医者に言われたのは「20歳まで生きられるかわかりません」という残酷なものだった。
 妃は嘆き、怒り苦しんだ。
 ソテツはそんな妃と一緒にいることで、次第に精神を病んでしまい、城を空けることが多くなった。
 妃がモンスターにしか見えないのだ。
 その頃、療養として訪れたリゾートホテルで知り合ったのが蘭の母だった。

 ローズが生まれてから2年後。
 妃は第二子を生んだ。
 男の子だった。
 次男はローズと違って健康に生まれ育った。
 妃は一安心した。
 だが、それもほんの束の間だった。
 次男が4歳の時に原因不明の高熱でうなされ、亡くなったからだ。
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