Your PrincessⅡ
 翌朝。
 渚がダイニングルームで朝食を食べていると、
 制服を着た蘭がやって来た。
「おい、小っこいの。学校まで案内しろ」
 朝いきなり、命令口調で言うなよと渚は思った。
 カチンときたが、我慢をする。
 小っこいと言うが、渚と蘭の身長はそこまで変わりない。

 渚は素早くスープを飲んで、立ち上がる。
「行きましょうか」
 なるべく笑顔で言おうと思ったが、怒りの方が顔に出てしまう。

 家から学校までは歩いて20分ほど。
 玄関のドアを開けて待っていると、蘭が一人でやってきた。
「あれ、アズマさんは?」
 渚が言うと、蘭は「あのなあ」とため息をついた。
「護衛を連れて学校に行けるわけないだろうが」
「え、でも。車で行くんでしょ? こっから学校まで歩くよ」
 渚が説明すると、
「歩けるっつーの」
 蘭がスタスタと歩き始めた。
 何だよ本当に…と渚は思いながら、蘭の横に立った。

 無言のまま、歩いて学校に到着。
 蘭が職員室に案内しろというので、渚は職員室まで連れていってあげた。
「またな、渚」
 急に蘭が名前で呼び出したので、渚は「何で?」と言ってしまった。

 変な奴だ。
 教室に着いて、ネオンや委員長に挨拶をする。
 就業時間になり、着席すると同時に担任の先生がやってきて。
「今日は新入生を紹介します」
 と言い出したので、渚は、まさかなと思った。
 だが予想に反して、教室に入ってきたのはまぎれもなく蘭だったので渚はガックリとうなだれた。
 生徒達は、蘭を見て「海の一族…?」とザワめき始める。

「新入生の蘭くんだ。知っている人もいるかもしれないが、蘭くんの家はスペンサー伯爵家でね。スペンサー伯爵と我が学長は旧知の仲で・・・」
 先生の説明に皆が不安げにザワザワ言い始めた。
 貴族ならば、Aクラスだろうが…と。
 一年生は3クラスあり、AとBクラスは貴族出身の生徒で固められたクラス。
 渚が所属するCクラスは、平民出身ばかりだ。
「皆が何故、蘭くんはAクラスじゃないのかと疑問に思っているかはわかるよ。私も最初は何故と思った」
 先生の発言にざわめきはなくなる。
 一気に教室が静かになった。
「学長に聴いてみたらね。何でも、スペンサー伯爵が特別扱いをしないでほしいという願いからだそうだ」
 何だそりゃと渚は思った。
 充分、特別扱いされているだろうが。
 一人部屋を使っていて、散々上から目線で物事を言って・・・

 それでいて、同じクラス・・・?
 渚はうんざりと蘭を見る。
 蘭はただ、まっすぐに視線を向けて立っているだけだった。
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