Your PrincessⅡ
良い匂いがするなと思って目を覚ますと。
暖炉の火が見える。
すっかりと辺りは暗くなっていて。
毛布をかけてもらっているのに気づいた。
まだグラグラと揺れているような感覚はするが、
吐き気はおさまったようだ。
「ご飯食べられそうですか?」
急に、シュロさんに声をかけられたのでビクリッと身体を震わせる。
シュロさんは、湯気がもくもくと出ているカップを差し出した。
「ありがとうございます」
カップを受け取ると、周りが静かなことに気づいた。
「あれ、蘭たちはどこ行ったんですか?」
小屋にいるのは、私とシュロさんだけのようだ。
「あいつらは、外で会議かな? 話し合ってます」
「シュロさんは、参加しなくていいんですか?」
質問したけど、シュロさんは答えずに暖炉のほうへと近づいて行った。
とりあえず、スープを食べてしまおうと思って。
一口、食べてみた。
玉ねぎとベーコンが入ったスープだった。
ゆっくりと食べている間、シュロさんは一言も喋らない。
「おいっ、もう寝るぞ」
バンッと乱暴にドアが開いたかと思えば。
蘭たちが中に入ってくる。
蘭と目が合うと、
「具合は良くなったのか?」
と大声で訊いてくる。
「あ、うん・・・」
頷く。
「俺はお前の横で寝る」
ふんっと鼻をならして、蘭が隣に座り込む。
「え…無理でしょ」
何言ってんだろうと思って、蘭の顔を見た。
昨日からずっとおかしい。
「夫婦なんだから、大丈夫だ」
「…そうじゃなくて、寝ている間に触れたりしたら…」
「カレンは僕と一緒に寝るんだ」
勢いよく抱き着いてきた渚くんにビクッと身体を震わせる。
「おめえはクリスと寝ろ」
怒った顔で蘭が言った。
「私、一人で寝れるから大丈夫だよ」
渚くんの頭をよしよしと撫でながら、言うと。
蘭と渚くんはお互いの顔を見合わせて、
「それは絶対に駄目」
「それは絶対に駄目だよ」
と、同時に言った。
「カレン、一人で寝るのは絶対に危険だよ」
慌てた様子で渚くんが言う。
「全員が同じ空間で寝るっていうのは色々あるんだよ」
蘭も慌てた様子で説明している。
渚くんは耳元で、
「シュロがヤバいの」
と小さい声で言った。
え? とチラリとシュロさんを見ると、
シュロさんは会話に興味なさそうにあくびをしている。
「じゃあ、私がカレンの隣に寝るわ」
とサクラが言う。
「てめー、今。男の身体だろうが」
蘭が怒って言った。
ぎゃーぎゃーと言い争う皆を見ながら。
ああ、疲れたなと思った。