Your PrincessⅡ
 10歳になったら、自分とクリストファーは貴族が通う学校へ行くのだと思っていた。
 今の家からだと遠いから、学校の宿舎で暮らすのかなあと考えていた。
 ずっとクリストファーと一緒にいられるのだと信じて疑わなかった。

 あの頃はあまりにも、子供だったということを恥じることになった。

「セレーナ、セレーナ」
 クリストファーの叫ぶ声が聞こえた。
 その日、クリストファーの家には母親が来ていた。
 昨日、クリストファーはうんざりとしながら言っていた。
「世間の目が気になるからって中途半端に様子を見に来なくてもいいのに」
 明日、母親が来るから家には来ないでくれと言われていた。
 クリストファーの母親はクリス一家を毛嫌いしていた。
 それ以上に、クリストファーが他人と接触していることを嫌う人だった。
「別に、会話なんてないに等しいのよ? 人の顔じろじろ見てすぐに帰る。それだけなの」

 クリスは、何かあったのだろうかと思って。
 すぐにクリストファーの家に向かう。
 だが、クリストファーの姿はなく、馬車が遠くを走り抜けていくのが見えた。
 玄関前に、青ざめた顔でお手伝いの夫婦が立っていた。
「どうしたんですか?」
 クリスが質問すると、
 お手伝いの奥さんの方が、ぎゅっとクリスの腕を掴んだ。
 手が震えている。
「坊ちゃんが…」
「え?」
「坊ちゃんが、少年騎士団へ入団させられました」
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