愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
俺の神様みたいな存在だった人を、一瞬で殺してしまった。そのことは俺にはかりしれない絶望として襲ってきた。
俺は、母親に自殺して欲しかった。
同情で俺を育て続けるのが嫌になって自殺するか、あるいは俺を捨てて父親から逃げるか。そのどちらを選んで欲しかった。殺されるんじゃなくて。だって殺されたら、証明されてしまうから。同情なんかじゃなくて、母さんはずっと俺を愛してくれてたってことが。愛してくれていたのに殺されたなんて、そんな酷いこと考えたくもなかった。
どうせ死ぬなら、自殺であって欲しかった。
父親の理不尽さと、同情で俺を育てるのに耐えられなくなって死んで欲しかった。
俺を自己犠牲を考えるまで愛さないで欲しかった。だってそれで死んだら、元もこもないではないか。
同情でよかった。
愛してくれなくてよかった。
愛してくれなくていいから、ただ生きて隣にいて欲しかった。
俺を幸せにするためならなんでもするなんて叫ばないで欲しかった。だってそんな言葉を残されたら、忘れように忘れられない。殺されたことを、永遠に考えざるを終えなくなってしまう。そんなのは望んでなかった。
同情で捨てられるか自殺されるかのどちらかであって欲しかった。もしそうだったら忘れられた。
紫色のものを見るたびに母さんが喜ぶかなと思って買って、部屋に置いてからいないのを実感して後悔にかられるなんてことにはならないハズだったんだ。
――忘れたかった。
忘れられる存在であって欲しかった。だってそうじゃないと、思い出すたびに後悔にかられて、死にたくなってしまうから。
父さんは母さんを殺害すると、その死体を山に埋めてから、妻に離婚届けを渡しに行き、偽りの夫婦生活をやめて、俺と暮らすのを選んだ。
俺は父さんの車の中で育てられた。父さんは俺を車の中に閉じ込めて、俺が警察のとこに行ったりするのと、警察に電話をかけたりするのを防ごうとしたんだ。
俺は車の中で縄で足を縛られて生活してた。その縄をほどいてもらえるのは、風呂に入る時だけだった。
トイレをしたくなった時は、車の中にあるビニール袋の中に用を足すように言われた。どんなに嫌だって泣き喚いても、それを強いられた。