愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
まさか、零次の……いやいや、ありえない。
そうだ、零次の足かどうかを確実に見分ける方法が、一つだけあるじゃないか。
俺は脚の靴と靴下を脱がせた。
「嘘だろ……」
足首に、縄の跡のようなあざがあった。
間違いない。これは、零次のだ。きっと零次の父親か、その知り合いが、海で見つけたんだ。
それを零次の父親が俺に送ってきた理由は、謎だけれど。
俺はいてもたってもいられなくなり、すぐに警察に事情を説明して、この足が誰のかを調べてもらった。そしたら、本当に零次のだった。
……あいつは、死んだのか?
いやいや待て。本当に死んだんだとしたら、他の身体は一体どこにあるんだよ? 海の中か?
もしかして魚に喰われて身体をバラバラにされたのか? いやいや、魚が喰ったならなんで足がこんな状態で見つかるんだよ。
本当に魚が喰ったなら、こんな状態じゃなくて、完全に骨の状態で見つかるハズだろ。少なくともあいつが相当魚の好みに合わなかったとかでもない限りは。
頭が混乱している。それも、ありえないくらいに。
少なくともあいつが死んでる可能性が、九十九パーセントくらいまで跳ね上がったことだけは確かだ。
「……嘘だろ」
身体中が震えて、嗚咽が漏れる。
涙が拭っても拭っても溢れ出す。
なんで。
なんで、どうしてこんなことになるんだよ!
俺はもう二度と零次に会えないのか?
なんでだよ。俺は今まで、あいつがいたから生きてこれたようなもんなのに。
俺はまだ零次に恩返しもできていないのに。
……嫌だ。
お前がいない世界で生きていくなんて。
お前がもう戻ってこないなんて。お前死んだなんて。そんなの絶対やだよ。
「うっ、うっ、うあ……」
涙が枯れ果てるまで、声をあげて泣いた。
今日は平日だから学校に行かなきゃいけないのに、その支度もしないで、自分の部屋にこもって夜まで泣いた。そうしたら、零次が帰ってくるわけでもないのに。