愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
二章 神様に出会って、人形は選択した。神様と生きることを
「はぁ……」
三分くらい走ると、前方に人気のないトンネルが見えた。
俺は車がこなそうなのを確認してからトンネルの中に入り、壁によりかかった。
スマフォを起動して、フォルダにあった名刺の写真に書かれていた番号に電話をかける。
「こんばんは。闇金融の人ですか。井島信也の息子の井島海里です。父親の名義で今すぐ十万貸してください」
これは復讐だ。俺なりの。父さんが俺にしたことに比べればかなりちっちゃいが、それでも俺が父さんを地獄に突き落とすことができる唯一の方法。
母さんと仲良く暮らすのなんて、絶対に許さない。俺があんたを地獄に突き落としてやる。
『お前それ、父親に許可は得てるのか?』
やっぱそれ聞いてくるか。
「得てないです」
得てるって言ったら父さんに確認のために電話するとか言われるかもしれないし、下手に嘘はつけないよな。
『なら貸せねえな』
「お願いします、どうしても金が必要なんです」
『お前は金が欲しいんじゃなくて、父親に復讐したいだけだろ』
「えっ、なんでわかったんですか」
『その反応、やっぱりか。借金に追われてる奴が子供に手をあげるのなんて日常茶飯事だからな。でもいいのか、そんなことして人生を棒に振って』
復讐。
他人に言われると、その言葉がかなり重く響いた。
本当に金を闇金から借りていいのか?
父さんを苦しめてやりたい。あの憎き父親に酷い復讐をしてやりたい。でもそんなことをしたら俺は、虐待がきっかけで非行に手を染めたことになってしまう。
虐待も、親の名義で借金をすることも立派な犯罪だ。俺はあんな父親と同類にはなりたくない!
「今の話、なしにしてください。失礼します」
そうつっけんどんに言って、俺は電話を切った。