愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
三章 人形は楽しんだ。――自分だけの神様と暮らす日々を。
「おはよー海里!」
翌日。
俺は窓から照りつけて来る朝日が眩しくて、目を覚ました。
台所にいる零次が声をかけてくる。
「おはよう、零次」
心の中で深呼吸をしてから、俺は挨拶を返した。
昨日よりは自然に返せた気がする。
「おう。海里、今日ホームセンターとかいって家具揃えてからお前の鞄買いに行きたいなーと思うんだけど、それ以外に行きたいとこある?」
朝ご飯をテーブルに置きながら零次は言う。
「ないけど……俺、退学にさせられそうだし、鞄はいい」
身体を起こしながら言う。
「それは俺がなんとかするから、鞄買い行こうぜ」
零次がベッドの上にいる俺のそばに来て、屈託のない笑顔で言う。
「え、お前、本当に学費払うの?」
「おう。払ってやるよ。わかったら行こうぜ?」
俺の火傷してない方の肩に腕をのっけて、零次は笑う。
「うん!」
零次の言葉に感激して、思わず笑みが溢れる。
俺が元気よく頷くと、零次は歯を出して、嬉しそうに笑った。
電車で一時間ほどで、ホームセンターに着いた。
ホームセンターの入り口の前には、ガーデニング用品やお花が置いてあった。
母さんが好きそうだな。
慌てて首を横に振る。
母さんのことは考えたくない。
「海里、どうした? 早く中入ろうぜ?」
そう言って、零次が俺の左腕を掴む。
「うっ、うん」
俺は零次に手を引かれて、ホームセンターの中に入った。
店内に入ると、零次はぱっと手を離した。
店内には工具やDIY用の壁に貼るシールや家具など、実に様々なものが販売していた。
「凄い色々あるな。零次のカメラもここで買ったのか?」
店内を見回しながら、俺は言う。