愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
「ちげぇわ。アレは親父の忘れもんだよ。俺の家に親父が忘れてったんだよ! それであの日の放課後返しに行こうと思ってたら昼休みにお前に出くわして、自殺したら嫌だと思ったからぬいぐるみにつけたんだよ。それで、親父になくしたからカメラに映っているのを手掛かりにしてどこにあるか調べたいって嘘ついて、映像見る機械貸して貰ったんだよ!」
「ふーん?」
確かにそれなら、つじつまは合うな。
「なんで零次の親監視カメラ持ってたんだ?」
「多分母親の浮気を疑ってたから、その証拠を集めるのに使うつもりだったんだと思う。ま、それ使う前に母親死んじまったけど」
作り笑いをして、零次は言う。
「……そっか」
俺はつい顔を伏せた。
「……海里さ、掛け布団は買うの決定として、敷布団とソファはどっちがいい? 両方置いたらだいぶ狭くなるし、金もかかるからどっちかに絞りたいんだけど」
気まずいのが嫌だったのか、零次は急に話題を変えた。
「あ、ソファだったら俺がソファで寝るから、そこらへんは気にしないでどっちがいいか考えていいぞ」
俺が答えを言う前に、零次は笑ってそう言った。
「え、なんで」
「だってお前、夜は毎日うなされてんじゃん。それなのにソファなんかで寝かせられっかよ」
俺の顔を見ながら零次は言う。
それを言われると、返す言葉もない。
「でも、毎日ソファだと零次が大変だろ?」
「俺は平気だよ。海里よりはよっぽど寝つきいいから。それで? どっちがいいんだ?」
「んと、ソファ」
「へぇ? なんで?」
零次は俺の発言を聞いて、にやにやと笑う。意地の悪い笑みだ。
「……零次とソファでテレビ見たりしたいから」
風が吹いたらすぐに消えてしまいそうなほど小さな声で、俺は言った。
零次は目を丸くして驚いた後、俺の火傷してない方の肩に腕をのっけて、とても嬉しそうに笑った。
「やめろ」
零次の手を振りほどいて、顔を顰める。
「えーいいじゃん!」
「うざい」
「ククク。やっぱり海里はツンデレだな」
零次が歯を出して、楽しそうに笑う。
「ツンデレじゃない。早くソファ見に行こ」
「はいはい」
眉間に皺を寄せて家具売り場に向かう俺の後を、零次が笑いながらついてくる。