愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
どうやらよっぽど誰にやられたか言いたくないらしい。
「これ、巻いて」
包帯を俺に渡して、零次は言う。
「うん。わかった」
渡された包帯を、俺は零次の両足に丁寧に巻いた。
「……ありがと。奈緒ちゃんたち待ってるし、もう行こうぜ」
俺に礼を言うと、靴と靴下を履きなおして零次は笑った。貼りついたような笑みだ。明らかに無理して笑っている。見てるだけで痛々しい。
「なぁ零次、どうしても言いたくないっていうなら詮索はしないけど、いつか教えろよ?」
零次の顔を覗き込んで言う。
「……いつかな」
零次は作り笑いをして、ほんの少しだけ、顔を俯かせた。
俺は零次の腕を自分の肩の上にやり、零次をゆっくりと立ち上がらせた。
「病人みたいな扱いすんな。別に平気だよ」
「嘘。無理すんな」
「ん。ありがと」
零次が頬を赤らめながら、笑って言う。俺はそんな零次を見て、少しだけ笑った。
「写真送られてきた。あいつらクレープ食ってるみたいだな」
俺の肩に腕を乗っけている零次がスマフォを見ながら言う。
「え? 乗り物にのってんじゃないのか?」
フードコートへの道を零次の身体を支えながら歩きつつ、俺は尋ねた。
「ああ。遊園地には色々な食べ物があるから、食欲をそそられたんじゃないか? ほら」
零次がスマフォに表示されている写真を俺に見せる。
奈緒と美和は本当にクレープを食べていた。
どうやら、奈緒はショートケーキが入ったクレープを食べていて、美和はガトーショコラが入ったクレープを食べているらしい。
俺はそれを見て、零次といったスイパラを思い出した。
あの時のスイーツ、本当に美味しかったな。
「……零次」
「ん?」
「俺、スイパラ、また行きたい」
「いいけど、せっかくのバイキングなんだからこの前みたいに少ししか食べないのはやめろよ?」
眉間に皺を寄せて、零次は言う。
あの時は結局、スイーツを五つくらいしか食べなかったんだよな。零次はその倍以上食べたのに。
「うん、頑張る」
「本当か? 小食のお前が言う台詞とはとても思えないな?」
「……最近、食生活が変わったから」
「へえー? 誰のおかげで?」
にやにやと笑って、零次は言う。
こいつ、タチが悪い。誰のおかげかわかってるくせにいってやがる。
まるで俺に感謝されたいとでも言っているみたいだ。
「……零次のおかげ」