愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
策略に乗るのが癪で、俺は小さな声で言葉を返した。
「ククッ。声小さっ!」
零次は喉を鳴らして笑った。
「うるさい」
俺は恥ずかしくなって、零次から目を逸らして、暴言を吐いた。
「はいはい」
零次は俺の照れ隠しの暴言を笑いながら流した。
そのまま五分くらい歩いていると、やっとフードコートに着いた。
「海里、もう支えなくていいから。本当にありがとな」
「うん」
俺はしぶしぶ、零次の身体を支えるのをやめた。
「おっそーい二人とも! クレープ食べ終わっちゃったよ!」
フードコートにあるクレープ屋のそばにいた奈緒が不満げに頬を膨らませて、俺の背中を叩いてくる。
「本当よ。三十分も待たせないで」
奈緒の隣でクレープを食べてる美和が言う。
どうやら二人ともだいぶ拗ねているらしい。
「ごめんね、奈緒ちゃん美和ちゃん! 電話長引いてさ」
零次は慌てて謝罪をする。
「……待たせてごめん。ちょっとゆっくり歩いてた」
俺も慌てて頭を下げる。
「別にいいわよ。ただし、タピオカ奢ってくれたらね! でしょ? 奈緒」
「うん! クレープ食べたからのど乾いたし、タピオカ飲みたい!」
美和の提案に、奈緒は元気よく頷いた。
「タピオカって何?」
「そっか、海里は知らないよな。なんて説明したらいいんだろうな。んー、飲み物の中に黒いもちもちした『タピオカ』っていうのが入ってんだよ。で、それがすごいクセになんの。ただ、普通に飲むとそれが大量に中に残る!」
零次はわかるような分からないような説明をした。
「……ごめん、わかんない」
特に最後がわからない。普通に飲むと大量に中に残るってなんだ?
「んーとりあえず飲んでみればいいんじゃない?」
「そうだな、まずは飲まないと始まらないよな!」
「じゃあ飲む? 零次のおごりで」
クレープを食べ終わった美和が零次の言葉に頷きながら、意地悪そうに言ってのける。
「俺だけ? 海里は?」
「零次が海里の親を説得するのが下手で遅れたんだから、零次だけに決まってるでしょ!」
「いやいや、さっき海里もゆっくり歩いてたって言ったじゃん!」
「ゆっくり歩いてたのが本当だとしても、電話が長くなければ、私達は三十分も待つことにならなかったわよね?」
「美和ちゃんの鬼!」
涙目で零次はそんなことを言った。
「自業自得でしょ」