愛を知らない操り人形と、嘘つきな神様
俺達は美和が持っているメニューを見ながら、列に並んだ。
メニューには、飲み物の中に黒くて丸いタピオカが何十個も入っている様子が書かれていた。
零次が言った通りだ。
「なんか不気味だな」
黒い粒粒が山のように入っている様子は、はっきりいってとても可愛くなかった。
「不気味ってそんなこと……あるかもしれない」
零次は真顔で俺の意見に同意した。
大方、ふざけているんだと思う。
「え、ないでしょ」
「ないわよ! 馬鹿なの?」
奈緒と美和が全く同じタイミングで零次に突っ込んだ。
よかった。
やっと動揺がなくなったみたいだ。
「えー不気味だろ」
「もう。何言ってんのよ」
美和が零次の背中を叩こうとする。俺は零次の足の怪我にひびくんじゃないかと思って、咄嗟に美和の手を掴んでしまった。
「「海里?」」
「海里くん、どうしたの?」
三人は俺のことを不思議そうな顔をして見つめた。
「いや、その……叩くのは良くないと思う」
俺はしどろもどろになりながら、手を離した。
「そっ、そうね! ごめんね、零次!」
美和は慌てて、手を下ろした。
「いやいや、ヘーきへーき!」
零次は笑って頷いた。
俺達はその後、注文したタピオカを受け取ると、メリーゴーランドの列に向かった。
「海里、さっきはありがとな。足のこと気にしてくれたんだろ」
タピオカを飲みながら俺の隣を歩いていた零次が言う
「あ、うん」
「お礼に、タピオカを上手く飲むコツ教えてやるよ。容器の真ん中じゃなくて、端っこにストローをさして、容器を傾けて、ストローを底よりちょい上で止めてみ? そうやって、タピオカをストローで端に追い詰めて飲むようにしたら、上手に飲める」
俺は零次の言う通りにして、タピオカを飲んだ。
「あ、上手い」
確かにタピオカがモチモチしていて、触感がクセになる。
「最悪! あたし、飲むの失敗した!!」
俺の前を歩いている奈緒が、急に大きな声を上げた。
「私も失敗したわ。何でタピオカって、こんなに残るのかしらね」
奈緒の隣にいる美和が、嫌そうな顔をして言う。
奈緒と美和が持っている容器は、ストローがジュースを多めに吸い上げたみたいで、タピオカだけが何十個も残ってしまっていた。
……中に残るって、そういうことか。
「二人はたまってるの?」
奈緒が後ろに振り向いて、首を傾げる。
「いや、たまってない。零次が上手に飲むコツ教えてくれたから」
「はぁ? ちょっと零次、なんで私達には教えなかったのよ! 私に一泡吹かせてやろうとでも思ったわけ?」
美和は零次を睨みつけて、声を上げた。
「ひぇっ! 美和ちゃん怖い!!」
零次は慌てて、俺の後ろに隠れる。俺はそれを見て、呆れたように笑った。
それから俺達はメリーゴーランドの他には観覧車などの絶叫系でないのばかりにのって、遊園地を楽しんだ。