わたしが最愛の薔薇になるまで
 見上げた葉室の瞳は、じわりと潤んでいた。
 彼の甘く熱っぽい表情を間近にすると、私はどうにも落ち着かなくなる。

「遠戚から引き取った双子を、立派に育て上げた貴方を尊敬します。私は、今日の食事会で貴方と添いたいと強く思いました。貴方はいかがでしたか?」
「私も……。葉室様と一緒になれるなら光栄に思います」
「良かった。今度は二人きりで、ゆっくり過ごしてみませんか。うちが西洋薔薇を卸している旅館がありまして……」

 葉室と次に会う口約束をする私は気づかなかった。
 暗い客車の中で、双子がじっとその様子を見つめていたことに。


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