わたしが最愛の薔薇になるまで
◆◆◆◆◆


 一高の校舎に入ったのは、蕾と咲の入学式以来だった。訪問着の裾をさばいて学長室へ向かった私は、亡き夫と交友のあった学長と対面する。

「お呼び立てして申し訳ありませんな。ご子息に関して、どうしてもお耳に入れたい事柄がありまして」
「蕾と咲が、何か仕出かしたのでしょうか?」

 これまで問題行動は一度もなく、保護者として呼び出されたのは今日が初めてだ。
 血の気の引いた顔で尋ねる私に、学長は気難しい顔を見せる。

「まだ断定はしていませんが、一高の生徒らしき少年たちが盛り場に出入りしていたと通報がありましてな。面立ちの整った双子という話だったので、寮に入らずに通学している垣之内のご子息を疑う者がいるのですよ」

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