わたしが最愛の薔薇になるまで
馬鹿っぽい口調で尋ねた少女の髪を撫でながら、咲は答える。
「君のおうち、生糸の輸出で有名なんだってね。港で顔がきくって聞いたんだけど、本当?」
「本当よ。お父様に言えば、どんなものでも運上所を通してもらえるわ」
「うちは商船を持っているのよ。何でも外国から取り寄せられるの。欲しい物があるなら言って。あたし、二人のためなら何でもしてあげる」
張り合う少女の手を、蕾はわざとらしく握りしめた。
「助かる。薔薇の種子を手に入れたいんだ」
「薔薇? そんなもの、その辺の店で買ったらいいじゃない」
「蕾は、種から育てたいんだよ。垣之内邸の庭は、松と池ぐらいしか見どころのない殺風景でね。僕らを育ててくれた人が、薔薇にまつわる名前をしているから、庭中を西洋薔薇で埋め尽くしてあげたいんだ。だから、誰にも知られない手段で、大量に手に入れる方法を探しているの」
「俺たちが動かせる金は多くない。そこから関税に持ってかれるのは馬鹿らしい。二人に頼んでもいいか?」
「君のおうち、生糸の輸出で有名なんだってね。港で顔がきくって聞いたんだけど、本当?」
「本当よ。お父様に言えば、どんなものでも運上所を通してもらえるわ」
「うちは商船を持っているのよ。何でも外国から取り寄せられるの。欲しい物があるなら言って。あたし、二人のためなら何でもしてあげる」
張り合う少女の手を、蕾はわざとらしく握りしめた。
「助かる。薔薇の種子を手に入れたいんだ」
「薔薇? そんなもの、その辺の店で買ったらいいじゃない」
「蕾は、種から育てたいんだよ。垣之内邸の庭は、松と池ぐらいしか見どころのない殺風景でね。僕らを育ててくれた人が、薔薇にまつわる名前をしているから、庭中を西洋薔薇で埋め尽くしてあげたいんだ。だから、誰にも知られない手段で、大量に手に入れる方法を探しているの」
「俺たちが動かせる金は多くない。そこから関税に持ってかれるのは馬鹿らしい。二人に頼んでもいいか?」