わたしが最愛の薔薇になるまで
「そうだね、全く必要ないよ。僕も蕾も結婚はしないもの」
「馬鹿なことを言わないで。この牢獄のような家で、死ぬまで私とともにいるつもり!? そんな苦しい人生を、あなたたちに味合わせるなんて、私は嫌よ!」

 涙目で叫ぶと、蕾と咲は怯んだ。今まで彼らの前で取り乱したことは無かったから、当然と言えば当然だ。
 力が緩んだ隙に、私は腕を伸ばして二人の頭を抱き寄せる。

「私は、二人に幸せになって欲しいの。垣之内に迎え入れられても、幸せはつかめると証明して欲しいの」

 私が必死に彼らを育ててきたのは、さまざまなものへの復讐でもあった。
 政略結婚への、垣之内家への、亡くなった夫への、こんな身の上の女を生み出した社会への、当てつけだった。

 それが間違っていたのだ。

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