わたしが最愛の薔薇になるまで
 双子にとって今の私は、私を閉じ込めた垣之内家そのものになっている。幸せな結婚をして、幸せになって欲しいのに、自らこの家に留まろうとしている。
 自己嫌悪で目眩がした。

「蕾、咲、大好きよ……。こんな家、潰してしまっていいの。だから、あなたたちは、私から自由になって……しあわせに、なって……」

 ぐるぐると頭の中が回る。
 意識は混濁し、遠くなっていく――。

 気を飛ばした薔子に抱かれていた双子は、すすり泣くように「幸せになって」と呟いていた彼女の寝息が聞こえ始めると、静かに起き上がった。
 薔子の白くて細い腕が、シーツのうえにぱたりと落ちる。

「今日の薔子さま、不安定だったね」

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