わたしが最愛の薔薇になるまで
 咲は、むうと頬を膨らまして、寝乱れた薔子の夜着を直した。

「かわいい寝顔なんか晒しちゃって。側にいるのは狼二匹だって分かってないよね」
「食われることはないと思っているんだろうな。自分に鋭い刺でもあると思っているんじゃないのか」

 蕾はそっと薔子を抱きあげて、ベッドの中央に横たわらせた。
 華奢な体は、まるで人形のように投げ出される。無防備なその姿が、双子の嗜好を毒のように侵してきたとは、考えもしないに違いない。

「この人は昔から、俺たちを抱き寄せたり、大好きだと言ったり、共寝しようとしたりは頻繁にあっただろう」
「他にどう子育てしていいか分からなかったんだろうね。十歳の男なんて、異性に劣情を抱き始める年頃なのに」 

 二人でシーツをかけてやり、薔子の隣に横たわった。
 髪を指で梳いて遊ぶ咲を横目に、蕾は閉じていた革張りを再び開く。

「気づかれなかったな。こちらには」

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