わたしが最愛の薔薇になるまで
 中には、かつて薔子に縁談を持ってきた男たちの目録がおさめられている。

「まさか、僕たちがずっと再婚させないようにしてきたなんて、予想もしないでしょ。それより早く寝ようよ。薔子さまと添い寝なんて久しぶり!」
「子どもみたいにはしゃぐな。起きてしまうだろう」
「大丈夫だよ。寝物語を読んでいるうちに、いつも先に寝ちゃって、朝まで起きない人なんだから」

 蕾は、本を閉じて寝台の下に仕舞うと、薔子に顔を向けて横たわる。
 そして、咲は左頬に、蕾は右頬に、小さな口付けを落とした。

「「あなたを愛してる」」

 幸か不幸か、薔子は己がそんな風に扱われているとは知らないまま、空が白むまで眠り続けたのだった。
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