わたしが最愛の薔薇になるまで
 私が再婚を勧められるのは今に始まったことではない。
 夫に先立たれて、双子を養子にとるまでは頻繁にあった。

「ご令息にも縁談が持ちあがる年頃でしょう。その前に、垣之内様ご自身が身を固められてはいかがでしょう。縁談相手のご心証が良くなるかと存じますが」
「あの子たちのため……。そうですね、考えておきます」

 いくつか選んで仕立てを頼むと、男は笑顔で去って行った。
 私は、赤いカーテンに手をかけて、枝振りの見事な松と広い池がある中庭を見下ろす。

「蕾も咲も、あの頃の私と同じ年齢になってしまったのね」

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