わたしが最愛の薔薇になるまで
私が垣之内家に嫁いできたのは、十六になってすぐのことだった。
否応なき政略結婚だ。夫は七十才を超えた資産家で、独り身で死ぬことを恥ずべき事と考え、お飾り妻を欲していたのである。
萎びた果物のように痩せた老人は、私の白無垢を見て我に返った。余生を過ごす相手が、孫のような年齢の娘ではおかしいと、ようやく気づいたらしい。
夫は、私に触れようとしなかった。食事も寝室も別にされたが、決して垣之内家の敷地からは出されなかった。
男性の使用人と会話したり、視線を合わせたりすることも禁じられた。
名前だけの妻なれど、若い男との不義密通は許しがたかったのである。
否応なき政略結婚だ。夫は七十才を超えた資産家で、独り身で死ぬことを恥ずべき事と考え、お飾り妻を欲していたのである。
萎びた果物のように痩せた老人は、私の白無垢を見て我に返った。余生を過ごす相手が、孫のような年齢の娘ではおかしいと、ようやく気づいたらしい。
夫は、私に触れようとしなかった。食事も寝室も別にされたが、決して垣之内家の敷地からは出されなかった。
男性の使用人と会話したり、視線を合わせたりすることも禁じられた。
名前だけの妻なれど、若い男との不義密通は許しがたかったのである。