【SR】hide and seek










ハァ、ハァ、ハァ、…ーー






暗闇に、荒く吐かれる息。

小さなふたつの影が、追ってくる何者かから逃れるように懸命に駆けていく。


「ようちゃん、どうしよう…」

息を切らし駆け続ける足をもたつかせながら、自分の手を引く陽子に向かって月子は怯えた声を出した。

「アレ、とちゅうでやめちゃったよ。
このままじゃ、のろわれちゃうよ…」


コックリさんは、決して途中でやめてはいけない。

必ず、帰ってもらう事。


それがコックリさんをする時の、子ども達の間で流れているルールだった。



「なに言ってんの!
今は、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

陽子の甲高い声が、陽の落ちた暗い廊下に響く。

「あの変なオヤジにつかまっちゃったら、それこそ終わりだよ!」


いつにない、陽子の表情。

涙こそ出てないが、その目に焦りが滲んでいる。

強く陽子に握られた手を月子はギュッと離れないように握り返し、恐々ながらも追いかけてくる足音の姿を見ようと駆けながら振り返ろうとした。

「バカっ!
つきちゃん、見ちゃダメ。走って…!」




駆けても駆けても、小さなふたりを追いかけてくる、大きな影。

それは少しずつ距離を縮めていくように、もったいぶりながら近付いて来ているように月子は思えた。


荒くなるふたりの息に混じって、聞こえてきだすもうひとつの息づかい。

真後ろから聞こえてくるその近さに、月子の心臓が更に跳ね上がる。

振り返れば、熱くくぐもる男の生ぬるい息が、
鼻先にかかりそうな程の近い距離……






ハァ、ハァ、ハァ、…ーー






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