【SR】hide and seek
「その時、敦君も小学校にいたんだよね。」

麻美がそう口をきった言葉に、月子は続けた。

「あっくんとわたしは、小学生からの幼なじみなんです。」



尋常じゃないふたりの声を聞きつけ、敦が向かった時にはもう遅かったらしい。

音楽室にある大きな写し鏡を背に、声を殺し泣いている月子。

無理矢理その手を引き、陽子の姿を見つけ出した時にはもう息を引き取っていたと言う。

2階の音楽室の窓から突き落とされた、陽子の小さな体。

先程まで月子の手を握りしめていた陽子の手のひらが、ギュッと堅く握られていた。


忘れ物を取りに小学校に戻っていた、と言う敦。

「その時、無我夢中で月子の手を引き探したんだけど、見つけた時にはもう手遅れで…」



当時建て直しをしていた校舎は、3年生のクラスと音楽室、理科室のみがプレハブに移されていたと言う。

後に事件が露呈され、その安全性がPTAに叩かれたのは言うまでもない。


敦はその顔こそ見なかったものの、運動場を走り去る犯人の後ろ姿はしっかり目に焼き付けていた。

犯人を捕まえる決め手になったのも、敦の証言からだった。



「わたし、犯人を見たんです。
嫌がるようちゃんを無理矢理窓から突き落とす姿を…」

凛とする月子の瞳が、隆之を見つめる。

「犯人?
捕まった人だよね。
確か、田畑……」

「田畑 智弘。」

麻美が付け足す。


「でもわたし、その時の記憶が曖昧で…」

月子は自分を責めるように、綺麗な顔をくもらせた。


「途中ではぐれてしまったようちゃんを追いかけていく、田畑の顔もしっかりとこの目で見ました。
突き落とした、その後ろ姿も。」

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