【SR】hide and seek
「ちょっと、待って。」
麻美は高揚する月子を、打ち切るように遮った。
「月子、
田畑が音楽室の窓から陽子ちゃんを突き落とすところ、見たの?」
「うん……」
神妙に、麻美の言葉に頷く月子。
それに続けて、隆之も問いかけた。
「陽子ちゃんとはぐれてちゃったんだよね?
逃げる陽子ちゃんを追いかけていく田畑を、その目で見た。
……はぐれたのは、どの辺り?」
グッと瞳を覗き込む隆之は、月子との距離感を忘れてしまったのだろう。
その近さに慌てて、麻美が間髪入れず隆之をひっぺがした。
「あにき、近すぎっ!」
そんなやり取りに苦笑いしながら、月子は答える。
「音楽室の少し前。
1階にあった3年生の教室から2階へとふたりで駆け上がった後。
ずっと付いてくる田畑からわたしを逃がすように、ようちゃんは少し奥まった柱の影にわたしを突き飛ばした……」
「そして、その時追い抜いていく田畑の顔を見た……」
考え込む隆之はテーブルに置いてあったタバコを器用に左手だけで1本引き抜くと、長い指先で穂先を弾いた。
「その後を、月子は追いかけたの?」
口を閉ざしてしまった隆之の言葉に、麻美は継ぎ足す。
その問いに黙ったまま何も答えない月子は、何だか言葉を探しているように見えた。
「追いかけた……
と、思うの。
わたしがようちゃんをほっとけるわけがないんだから。
そう思うんだけど、
はっきり覚えてなくて…」
月子は必死で何か思い出すように、その整えられた眉をひそめる。
曖昧な月子の記憶に、顔を見合わせる麻美と隆之。
お互い何も口には出さなかったが、引っかかる点は同じだったらしい。
麻美は高揚する月子を、打ち切るように遮った。
「月子、
田畑が音楽室の窓から陽子ちゃんを突き落とすところ、見たの?」
「うん……」
神妙に、麻美の言葉に頷く月子。
それに続けて、隆之も問いかけた。
「陽子ちゃんとはぐれてちゃったんだよね?
逃げる陽子ちゃんを追いかけていく田畑を、その目で見た。
……はぐれたのは、どの辺り?」
グッと瞳を覗き込む隆之は、月子との距離感を忘れてしまったのだろう。
その近さに慌てて、麻美が間髪入れず隆之をひっぺがした。
「あにき、近すぎっ!」
そんなやり取りに苦笑いしながら、月子は答える。
「音楽室の少し前。
1階にあった3年生の教室から2階へとふたりで駆け上がった後。
ずっと付いてくる田畑からわたしを逃がすように、ようちゃんは少し奥まった柱の影にわたしを突き飛ばした……」
「そして、その時追い抜いていく田畑の顔を見た……」
考え込む隆之はテーブルに置いてあったタバコを器用に左手だけで1本引き抜くと、長い指先で穂先を弾いた。
「その後を、月子は追いかけたの?」
口を閉ざしてしまった隆之の言葉に、麻美は継ぎ足す。
その問いに黙ったまま何も答えない月子は、何だか言葉を探しているように見えた。
「追いかけた……
と、思うの。
わたしがようちゃんをほっとけるわけがないんだから。
そう思うんだけど、
はっきり覚えてなくて…」
月子は必死で何か思い出すように、その整えられた眉をひそめる。
曖昧な月子の記憶に、顔を見合わせる麻美と隆之。
お互い何も口には出さなかったが、引っかかる点は同じだったらしい。