【SR】hide and seek
一夜明けた日曜日の空は、抜けるような碧の色。
その碧が、一際眩しく輝く太陽を背に両手いっぱい広がっていた。
だが、吹きつける風は冷たく、冬はもう間近なんだと感じられた。
寝ぼけた頭で、リビングに向かう麻美。
スリッパを履いていない素足が、ひたひたと音を立てる。
ガラス張りのリビングの扉を引くと、思いがけない朝食のいい匂い。
朝の淡い光と共に、麻美を優しく包み込んだのだった。
「うわぁ、スゴい!
月子、
これ全部、ひとりで作ったの?」
目の前に、色とりどりに並べられた朝食。
それを見て、思わず反応する麻美の腹の虫。
「勝手に作っちゃったんだけど、よかった?
わたし、何かお礼がしたくて。」
頬を染めた月子は、はにかんでそう言う。
ウンウンと満足そうに首を振り、麻美は嬉しそうに笑った。
「ありがとう!
スゴく嬉しいよ。
冷めないうちに食べちゃおうよ。」
エプロンを腰に巻いた月子の手を引き、食卓の椅子を麻美はすすめた。
その月子の黒髪から零れ落ちる、花のいい香り。
すとんとまっすぐに伸びた、綺麗な髪。
それはまるで、無垢な月子自身をあらわしているようだった。
「お兄さんは…?」
姿を現さない隆之を気づかい、麻美に向かって月子は尋ねた。
「10年前の事件の事もう少し調べてくるって、夜中に出てっちゃったんだ。
帰ってきたのも朝方だったし、もう少し寝かせておこうと思って。」
目の前に座る月子にそう言いながら、麻美は温かそうな湯気を立てるスクランブルエッグを口に運ぶ。
優しい味が、ホロリと口いっぱいに広がった。
「うん、美味しい!」
そんな満足そうな麻美を見つめ月子は複雑そうに微笑むと、言いづらそうに話しを切り出した。