【SR】hide and seek
「逃げる間際、
下で倒れている月子ちゃんの指から指輪を抜き盗ってしまった事には、訳があったんだって…

月子ちゃんにあげる前、その指輪を敦君が大切にしてたのどこかで田畑さん知ってたみたい。
その指輪を持っていたら、また敦君に会えるきっかけになるんじゃないかって。
もう一度敦君に会って、これまでの事をきちんと謝れるチャンスが来るんじゃないかって、そう思ってたみたいだよ。」


そんな淡い願いから、思わず指輪を抜き盗るという行動にでてしまった田畑。

壊れてしまった今のふたりの関係では、その願いも叶うことはない。



「もう一度だけ、
最後に親子として、正面から向き合いたかったって……」






その麻美の言葉に、ゆっくりと解放される陽子の体。

大きく吸い込んだ息にむせながら、陽子は床に倒れ込んだ。


麻美からそっと手渡された指輪が、敦の手のひらの中で小さく輝く。

そのおもちゃの指輪を見つめたまま、敦は思わず声を詰まらせた。


月子にあげた、最初で最後のプレゼント。

そして、その指輪の裏にマジックで小さく書かれた、子どもの丸文字を見つける。


月子が書いたんだろうか。

10年経った今でも、はっきりとその想いがしるされていた。







『 あっくん だいすき 』









「田畑さん、3日前に河川敷で発見されたよ………」


そう告げられた敦の頬を、一筋の涙が伝っていった。




















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