【SR】hide and seek
「でも、あにきが来てくれて助かったよ。
あのまま理科室で倒れたままだったら、陽子も危なかったもんね。」

「そうだな…」と隆之は一言繋ぐと、やりきれなさそうにため息を付いた。


「あにきって、
敦君の事、最初から疑ってたの?」

そう聞く麻美に、隆之は首を横に振る。


「いや……

だけど、陽子ちゃんのコックリさんの話聞いて、敦君に少し引っかかっていた事は確かかもしれないな。」

ゆっくりと下げた視線が、麻美とぶつかる。



「「動かなかった、コックリさん。」」



同時に重なったふたりの声に、麻美は小さく笑った。

「あにきも小さい頃、コックリさんしたことあったの?」


コックリさんの動かなかった理由ーーー

麻美と隆之は小さい頃した禁じられた遊びを思い出し、そのルールを頭に浮かべた。

ーー知りたい相手の名前を、きちんとコックリさんに伝える事ーー




離婚して、名字がふたつあった敦の事。

その事を知らなかった陽子と月子が、いくら敦の事を尋ねても動く訳がなかったのだ。


今思えば、あの禁じられた遊びが本物だったかどうかは、大人になったふたりにはわからない。

だが、子供の間で未だ継がれるその遊びに、麻美は気持ちを馳せらせた。



夕闇迫る教室で、文字が書かれた紙に向かい合う小さなふたつの影。






『コックリさん、コックリさん
教えてください……』



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