【SR】hide and seek
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朝の6時を目の前にしようとも、12月を間近に控えた東の空は、一向に明ける気配がない。
ゴミを漁るカラスの鳴き声に急かされるように、重たい瞼を開けた朝陽がようやくその顔をのぞかせ、空を白ませるのだった。
事の起こりは、ここ都内を南北に走る名もない河川敷から始まった。
一夜明け、つめたく冷えた川の水があたたかく輝く朝陽を受けて、キラキラと川面にたくさんの足跡を残していくように見える。
そこに生を成す生き物達も、この夜明けに喜びながら活動しだす、そんな1日の始まり。
そして、
その喜びに満ちた場所とは無縁のひとつの影が、川上からゆっくりと下ってくる。
つめたい水に揺られて、逆らう事なく流れる姿。
50代前後だろうか。
白髪交じりの頭部から背にかけて、ぽっかりと川面に浮かんでいる。
息をする事もなく、ただおもむくままに流されながら。