【SR】hide and seek







「あにき、起きなよ!
遅刻するよっ!」




毎朝、この時刻になったら眞鍋家から響く麻美の声。

時計の短い針が、ちょうど8時をさそうとしている。


「いいかげん起きなって…ひつこいよっ!!」

その声と同時。

柔らかく体を包んでいた毛布が、容赦なく剥ぎ取られていった。

「ん…ーー」

愛しい恋人を連れ戻すように、ひっぺがされた毛布を器用に足で手繰り寄せる隆之。

そんな毎朝恒例の兄の姿を見て、今日も麻美は大きなため息を付いた。




眞鍋 隆之。

眞鍋 麻美。


都内超高層ビル群が建ち並ぶこのエリア。

そのそばに建てられたマンションの高層階に住む、ふたり兄妹。

両親は、一年中海外を渡りまわる有名バイオリニスト。

年に一度か二度、元気な顔を見せに日本に戻ってくるぐらいの、そんな気ままな両親である。


13も歳が離れた兄妹だったが、年を追うごとにこうしてのんびりと穏やかな性格の兄隆之の世話を、いつの間にか麻美がやくようになっていたのだった。


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