【SR】hide and seek
｢今日、友達連れてくるって言ってたじゃない。｣

｢友達……｣


理由もわからず眉間にしわを寄せた隆之の考え込む姿は、また気を抜くと眠りに落ちそうだ。

間髪入れずに、麻美は続けた。


｢その友達紹介したいから、今日は寄り道しないで早く帰ってきて欲しいの。｣


高い位置で結わえられたポニーテールの先が、麻美にあわせてふわりと優しく揺れる。

朝陽を受けて落ちたその影を見つめ、隆之は眉をしかめた。

｢寄り道って、ガキじゃないんだから……｣


けたたましい麻美の攻撃に観念した隆之はゆっくりベッドから起き上がると、サイドテーブルに置かれたタバコを手にし、そこから１本器用に引き出した。

火もつけずにくわえ、麻美に聞こえるようにそう呟く。

そんな隆之の心の声を聞き流すように、麻美は言葉を繋げた。


｢とにかく、会って欲しいの。
帰ってくるの待ってるからね！｣


そう無理矢理隆之に言葉を押し付けると、また忙しそうに麻美は部屋を出て行ってしまった。



その、毎朝繰り返される眞鍋家の慌ただしさ。

隆之はいつものように苦笑いをし、麻美の背中を見送るのだった。


















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表紙・目次

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