さまよう
「何秒?何秒止まるの…?」
手足がガクガクと震える。血の気が引いて脳内が暗くなるのが解る。
逃げなければ…逃げなければ引き殺される…!
生まれたての小鹿のようにガクガクと崩れ落ちそうになる足を動かし、少しでも遠くへと歩を進めた。
周りでは異変に気付いて同じように距離をとる人もいれば、訳も分からず呆然と立ち尽くしている人もいる。
逃げて、お願い逃げて…。
そう思いながらも乾いた喉では声を発することもできず脂汗をかきながら逃げることしかできなかった。
おおよそ十五秒。時は止まっていた。
トラックの時を止めても、動くはずの運命は変えることが出来ない。
時が流れ始めた瞬間、曲げていたハンドルの方向へ向かって車体を大きく揺らしながら二百メートル以上先へ吹き飛んだ。積んであった荷物もあたりへ飛び散り、凶器と化した。
近くにいた人も、立ち並ぶ家の塀や門も、信号機や標識も、一瞬にして崩れて飛んで行った。恐ろしい速度だった。
絶望的な光景だった。