さまよう
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花村由美は、アウトレットモールの中を目的もなく歩いていた。気晴らしと暇つぶしだ。
日は射しているが風が心地よい。これだけ人のいる場所では問題を起こす人も居ないだろう。
家にいるばかりでは滅入ってしまうが、人気のない場所では特殊な能力を使って楽しむ人も居る。噴水で水を操るのは楽しいだろうし力の使い方に慣れているならば、噴水よりもよっぽど綺麗なものが見られる。
そんな悪意のない力でも彼女は見るのが辛かった。
考え事をしながら歩いていると向かい側から小走りで横を通り過ぎていく人がいた。
一人ではなく、三人四人、少しずつ増えていく。
当てもなく歩いていたその正面の奥に人だかりができている。そこから逃げるように散らばる人たち。
一瞬広がった隙間から見えたのは、いや、
消えたのはあの双子だ。
物心ついた頃には定期的にニュースに取り上げられているその双子のことを由美が知らないわけがない。嫌でも目に入るし、おそらく人よりも敏感にその情報を拾ってしまっているだろう。
心臓が脈打つ。あまりにも大きな血液の動きに肺機能が止まったかと思った。一瞬にして汗が吹き出し苦しくなった。
あの双子は特殊な能力を持っている二人。特殊な能力に取り込まれた二人。
由美と親しくしていた友人と同じ、特殊な能力と関わりのある二人。