さまよう
概要の説明を友人に話す大人たちは、忘れかけていたことがあった。それは、彼女が人間であるということだ。
彼女もまた自分が人間であるということを忘れていた。
それでも唯一残っていた人間としての感情があった。
消えたい――…。
彼女は自分を時に流した。
あれはいつの事だっただろうか。
由美が高校に入った頃か、『タイムマシンを使った少女』が都市伝説で話題となっていた。
そこで必死にかき集めた情報も本当の事なのか全く解らない。
特殊な能力を取り込んだ人間を見ると堪らず眼をそむけたくなってしまう。片時も忘れたことのない友人。
都市伝説が伝える通りもうこの世界に存在しないのか、それともひっそりと生活を続けているのかも解からない。
哀しい目をしていた友人は、どんどん生気のない目に変わっていき、小学校卒業の頃には休みがちになり、そんな彼女に何をしてあげればいいのか由美には皆目見当もつかなかった。
いつも能力者を見つけると目をそらして逃げ出していた。
世界に二人しかいない特殊な能力に興味があるわけではない、その能力に恨みがあるわけでもない。
友人の事が頭にこびりついたまま視線が釘付けになる、気になってしょうがない。
あの双子も検査や実験をさせられているのだろうか。
そしてなんて哀しそうな目をしているのだろうかと――。