さまよう
「おまえたちは生ビールは初めてか?そりゃ美味いだろうさ。焼き鳥と一緒に飲んでみろよ、止まらなくなるぞ」
はははと豪快に笑ったおじさんにお礼を言い、先ほど見かけた焼き鳥を買いに行くことに。
「焼き鳥ください」
塩とタレ、どっちがいい?と聞かれて悩む二人。
待たせてはいけないと思い、両方とも二本ずつお願いした。
「今ちょうど焼き始めたところだから、少し待ってくれ」
口数の少ない男性は後ろに居た女性を呼ぶ。串に刺さった焼き鳥を炭の上でくるくると回す姿は二人にはとても新鮮なものに映り釘付けになる。
呼ばれた女性は並べられた焼き鳥の上に手をかざす。生焼けの部分にどんどん火が入っていく。能力者のようだ。しかし、火を操っている様子はない。
あとは仕上げで。そういった女性はまた奥のほうへ去っていった。
男性は焼き鳥に右手の甲を向ける。左側から右側へ動かすと、炭火の勢いが強まった。串を回転させて火を弱めたり強めたりと何度か繰り返す。
「熱いうちに食ったほうが美味いぞ」
そう言ってパックに詰めた焼き鳥を手渡してくれた。六百円を支払い手近なテーブルに着く。
焼き鳥をほおばり、ビールで流し込む。