さまよう
祭りで出会った三人に何か感化されたのか、その能力によるステージを見たことで変化が起こったのか分からないが、この結果が示すことは二人がそれぞれの場所に特殊な能力を取り込んだということである。
「これって、いろんな人の力を見ていけば、僕たちも力が使えるようになるのかな?」
翼の疑問に答えられる確証は何もない。
しかし、他にも何かヒントになるものがないか調べると言った医師の言葉に二人はその結果が解るまで病院内を散策することにした。
とはいえ他人の病室に乗り込むことも出来ずにナースステーションで話をしたり、中庭でのんびり過ごした後、交流ルームで飲み物でも貰って過ごすことにする。
カウンターでコーヒーを頼んでいた二人の目に入ってきたのはテーブルに肘をついてうなだれる女性と、それに覆いかぶさるように寄り添い背中をさすりながら『あなたは悪くないのよ』と声をかける女性だった。
近くに座っていた翔と翼だったが、一向に顔を上げようとしないうつむいた女性が心配になり『大丈夫ですか?』と声をかけてみた。
「大丈夫じゃない……!」
話しかけるなと言わんばかりの勢いでこちらを向いた背中をさすっていた女性は、双子の姿を見て口を閉ざした。
恐らくうつむいている女性の母親だろう。自分の娘のことが心配でつい声を荒げてしまったようだ。
特殊な能力に取り込まれた双子として知れ渡っている翔と翼を見て簡単に文句を言えなくなってしまったようだ。