さまよう
「そうだな、申し訳なかった」
翔が頭を軽く下げると、うつむいていた女性はちらりとこちらを見る。恐る恐る呟いた。
「…使える能力がないって本当?」
翼は少しだけ寂しそうな顔で答える。
「使える力は何もないんだ、本当だよ。君の能力は?」
逆に質問をされた女性はまたうつむき、『…時を……』とだけ呟いた。
「翔くん、翼くん、調べてみたよ」
後ろから聞こえた看護師の声に振り返る。
「マミちゃんと話してたの?」
看護師の言葉に少しだけ反応するマミという女性。
「このお兄さんたちね、双子だからどっちがどっちかわからないかもしれないけど、お話を聞くのは上手だよ」
そう言い残して看護師は双子を誘って交流ルームを出ることにした。
双子が連れていかれたのは診察室。複数のモニターを使ってデータを見比べている医師は過去に今回のような症状が出たことは無いと言う。
成長するにつれて能力値が上がっていることは確認しているが、それは他の能力者と同じことで力が成長しているだけだろうと判断しているようだ。