さまよう
「力が使えないって幸せ?」
幸せかぁ…と呟く翼。
「僕は幸せが何かまだよく分からないんだ」
「力の種類にもよるのかもしれないけど、俺は羨ましいとは思うかな。昨日見た氷の像は凄くきれいだったし、物を操るのは楽そうでいいな」
私の能力はそんなにいいものじゃない…。そうつぶやく麻未からの質問は止まらない。
「役に立たない力はどう思う?時を止めたってなにもいいことがない…」
「役に立つかどうかは、その時々で変わってくるんじゃないかな。それに、役に立つ立たないを決めるのは自分じゃなく出会った人だと思う。周りが役に立つって言えば役に立ってるんだよ」
もう人には出会いたくない…。そう言ってうつむく麻未。
「僕たちと出会ったでしょ?」
その翼の言葉にハッとなる麻未。なぜ声をかけてきたのかと問いかける。
「俺たちも声をかけてもらったんだ。そして、何気ない会話が大切だったんだと最近知ったんだよ。話しかけてくれたその人のことは大切にしないといけない。何年たっても変わらずに居てくれる人は大事にしないといけない。そう気づいたんだ」
「僕たちね、その人にこれから沢山助けてもらうと思う。今もう既に助けてもらってるんだよ。だからその人の真似をしているのかもしれないね」