さまよう

「実はな」


 二人の戸惑いを感じながらも亮一は言葉を続ける。

「去年の末に結婚したんだ。翔と翼に伝えようと思っていたんだけどなかなか連絡できなくてな。誕生日も近いことだしお祝いと一緒に伝えようかと思って」

「なんだよ、すぐに連絡してくれてもよかったのに」

 おめでとう、おめでとうと祝う二人に照れくさそうに笑う亮一。引っ越しもしたからあとで住所を送っておくよ、遊びに来い。そう言ってじゃあなと通話を切った。

 しばらくスマートフォンの画面を見ていた翔が呟く。


「祝ってもらったな」


 戸惑いは未だ消えないが、亮一から祝ってもらうというのはいつも特別だった。いつも嬉しかった。自然におめでとうと言われなくなった理由も薄々感じていた。今回も変わらず戸惑ってしまった。


「お祝いしたいね」


 翼の意見に反対する理由なんか無かった。誰かに何かをしたいとこんなにも自然に思えるのは初めてかもしれない。

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