さまよう
それでも学校で、街中で、不安と恐怖と罪悪感に呑まれてしまった麻未は、本格的なケアが必要とみなされて中学に上がる前から今まで入院しているのだ。
麻未は由美のことを気にしていた。最近やっと看護師との会話が増えてきていたころだったが、それより前から由美の名前はよく聞いていたそうだ。
「今このタイミングで麻未ちゃんと由美さんを会わせることが正解なのか、それともまだ早いのかは分からないけれど、不思議な能力に包まれている翔くんと翼くんが二人にきっかけを作ったのも何かの縁かもしれないし。タイミングを見て会える時間を作りましょうね」
由美を見ると、少しうつむいてうんうんと何度も頷きながらぱたぱたと涙を落していた。
麻未と由美が会う機会は思いのほか早く訪れた。麻未の状況を聞いてからおよそ十日後、由美にいつ会える?と麻未が口にすることが増えたのだ。
麻未と双子、三人は病院の会議室に居た。各保護者と看護師も居る。
前回同様ドアをノックする音の後に由美が会議室へと足を踏み入れた。
麻未を見つけた由美はその姿を見て立ち尽くしぽろぽろと泣き出した。
椅子に座り今にも泣きだしそうな顔をしていた麻未にゆっくりと近づき、優しく抱きしめた。
麻未も由美の背中に腕を回し、二人はちぎれそうなほど抱きしめあい、外れそうなほど肩を震わせて、呼吸が乱れて途切れる声を出しながら泣き続けた。
落ち着きを取り戻した二人は顔を見合わせる。
「私、麻未ちゃんの力が好きよ」
由美がそう言うと麻未はそのまま由美の肩に顔をうずめて肩を震わせていた。
二人がしっかりと落ち着くのを待ってその日は解散となった。