さまよう
「母さん、午後から出かけてくる。亮一が結婚したんだ」
「あら、それはおめでたいわね。どこに行くの?連絡しないと」
翔は何か祝いの品を送ろうと思った。住所も教えてくれると言っていたし、インターネットを使えば簡単にプレゼントを選び送り届けることは出来る。しかし特別な出来事だ。自分の目で見て何かを選びたかった。
「僕、いつものアウトレットモールくらいしか知らない」
「あそこなら何かいいものも見つかるだろう。俺もあそこしか知らない」
スマートフォンを用意していた母親はアウトレットね、と言いながら電話をかけ始めた。
「午後からいつものアウトレットに用事があるらしいわ。お昼を食べ終わったら出かけると思う」
スマートフォンを置いて時計を見て、あらこんな時間と呟きながら母親はキッチンへと向かう。
服装は、このままでいいや。そう言って翔は背もたれに頭を預けた。
「昼飯ができるまで待つか」
「僕は着替えたい。このシャツは部屋着だし襟首がよれよれだし」
「そうか。じゃぁ部屋だな」