七夕の夜、二人で見上げた星空
5.最強の不良男子
私の後ろの方で、話し声が聞こえる。
クラスメイトに私の名前を聞いてるけど、振り返って確かめる状況じゃない。
あの人です、そうかサンキュー、などのやりとりをしてるようだ。
私のことを聞いて歩いてるのは男子生徒みたいだけど、誰だろう。
「やっべ、あいつ瀬戸じゃん……なんでこの教室にいるんだよ……」
足音は私の背後で止まり、低い男子の声が周囲に響いた。
「どいつが宇佐 洋子だ!この中にいるのか?」
カーストの子が素早くハサミを隠して、頭をペコペコ下げながら話し始める。
「先輩、この人です」
周りの子たちも、私に向けて指をさす。
「じゃあ、アタシたちは失礼します。ごゆっくり〜」
係わりたくないと、逃げていくように早足で消えていった。
絶体絶命の状態から切り抜けたけど、こんどは背後から異様な圧力を感じる。
あの子たちが背中を丸めて逃げるほど、怖い存在の先輩って……
私は勇気を出して、ゆっくり振り返る……