夜を照らす月影のように#1
もし、この小説の話の通りに天気が変わるなら――。

「それに、あの怪物は火が苦手みたいだ」

見た目の割に軽い刀を構え直して、僕は怪物に斬りかかる。怪物を斬っても、僕の刀は溶けることはない。リオンの矢を溶かした液体は、乾燥してるから。

怪物は、弾けて消えていった。次の瞬間、ぽたりと僕の頬に冷たい何かが当たった。

「……やっぱりね」

僕が手を出すと、土砂降りの雨が降り出した。その雨は、煌々と燃え盛っている炎を消していく。

「……リオン、風邪引くよ」

僕は眠っているリオンに近づくと、魔法で傘を作り出した。その時、リオンは目を覚ます。

「……」

リオンは、僕と目を合わすと優しく微笑んだ。次の瞬間、僕の目の前は真っ暗になった。



目を開けると、僕は床に横向きに倒れていた。体を起こすと、そこは僕の部屋。僕の近くには、僕の書いた『闇を纏いし少女に光を』が置かれている。

「……ノワール、目が覚めた?」

窓に目を向けると、そこには窓枠に手を乗せながら僕を見つめるリオンがいた。

「……リオン……」

「まさか、ノワールが本の世界に入ることができる力を持っているとはね……」

そう言って、リオンは微笑む。僕はリオンの言っていることが理解出来なくて、リオンを無言で見つめていた。
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