私の婚約者には好きな人がいる
「あのメールを見た後でよくそんなことを言えるな!?今日の朝、高辻社長がここに来られる。きちんとお願いするつもりだ」

「はい」

そんな大袈裟な、と思っていた。
お父様に会うまでは。
惟月さんに会いに来たお父様は黒服のSPを何人も連れて現れた。
まるで、マフィアのボスみたいで、映画の中の人みたいだった。
黒いサングラスと帽子をとると、いつものお父様で安心したけど、惟月さんを軽く睨んでいる。

「高辻社長。ご足労頂きまして、ありがとうございます」

「お父様。おはようございます」

「ああ。おはよう」

ソファーに座ったお父様はそわそわしていて、どこか落ち着きがない。

「惟月君」

「約束はきちんと守ってますよ」

「なら、いいと言いたいが、娘を連れ去るのは感心しないね」

冷ややかな目で惟月さんを見、コツコツと指でテーブルを叩いた。
惟月さんは凄んだお父様にも動じず、微笑みを浮かべて言った。
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