私の婚約者には好きな人がいる
「咲妃さんと二人で話をしたかったので。だいたいこんな乱暴な真似をしたのは恭士さんが邪魔をしてくるせいですよ」

「恭士は少し過保護なところがあるからな」

「そのせいで会えなくなるのは困ります。ですから、これからは咲妃さんと一緒に暮らせたらと思っています」

お父様は渋い顔をした。

「しかし」

「入籍します」

惟月さんの言葉にお父様は目を見開き、言葉を失った。
私も驚いたけど、惟月さんは真剣だった。

「それは、いや、まあ……」

お父様は見るからに動揺していた。

「結婚式の後がいいんじゃないかね」

「恭士さんが邪魔をして、自由に会えない上に結婚させないつもりでいる。知っていますよね?」

「まあ」

うーんとお父様は唸り、私を見た。

「私は惟月さんといたいです。もうじき、結婚式ですから、早めに入籍しても私は構いません。引き離されるよりはいいです」

「咲妃……」
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