私の婚約者には好きな人がいる
そばにいて
惟月(いつき)さんと一緒に土日の間に買い物を済ませ、婚姻届けを出した。
もちろん、清永(きよなが)の家にも挨拶に行き、おじ様とおば様に報告すると、驚いていたけれど、とても喜んでくれた。
あまり長居をしたくないのか、惟月さんは必要なことだけを二人に話すと清永の家から出て、すぐにマンションに戻ってきた。

「清永の家にいい思い出はないから」

ぽつりと惟月さんは言った。
そっと手を握ると、惟月さん小さく笑った。
どんなふうに育ったのか、わからない。
ただ清永の家に入る時、惟月さんが苦しそうにしていたのはわかった。
マンションに帰ると、ほっとしたように惟月さんは息を吐き、肩の力を抜いた。

「大丈夫ですか?」

「ああ。悪い」

「お茶入れますね」

「お茶はいいから、ここにいてくれ」

隣に座ると、惟月さんは抱きしめて、髪に顔を埋めた。

「やっと触れられる」
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