私の婚約者には好きな人がいる
さらに首に力をこめられ、苦しさから目を閉じかけた瞬間―――

「やめろ!」

ドンッと中井さんの体が突き飛ばされ、体が自由になった。

「大丈夫か!? 」

気づくと、惟月さんの腕の中で、ホッとして、深く呼吸をした。

「どうして惟月さんが……」

「遅かったから、見に来たんだ。どうしてこんな!」

惟月さんは中井さんに向き直ると、声を張り上げた。

「何のつもりだ!」

「惟月。どうして?私のことはもういいの!?そんな簡単に私を捨てられるの!?」

「俺は待てないと言った。それを承知で海外支店に行ったんだろう」

「違うわ!待っててくれると思ったからよ。簡単に捨てたわけじゃないわ!海外支店で自分の力を試したかったの。でも、失敗してからは周りの皆は私に冷たくて」

「周りがどうであれ、海外支店に行くのが夢だったなら、チャンスをものにして思いを貫くべきだった」

惟月さんの目は鋭く、声は低い。
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